三本目の裏通り

見たもの、考えたことの覚え書き

米田茶店の思い出 「おばちゃんのお弁当」がある駅で

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兵庫県新温泉町のJR浜坂駅前にある米田茶店がお弁当の販売を終了し、来夏に閉店することを知った。

駅を出て左手すぐに立地し、弁当やおでん、カレーなどの手作り総菜を販売しているほか、飲み物や菓子類、地元の水産加工品なども棚に並び、駅弁も売られていて、観光客が欲しいものが何でも揃うお店だ。馴染みがない方に想像していただくとすれば、店内調理の弁当で知られる北海道のローカルコンビニ、セイコーマートが近いかもしれない。コンビニと個人商店の良い面を併せ持ったお店だ。

 

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雪の日の駅前と米田茶店

浜坂駅は長大なJR山陰本線の途中駅だが、兵庫県日本海側の西端部に位置し、鳥取県との県境に近いこともあって、多くの列車がここを終点とする。乗り換えの時間はだいたい10分程度あって、直通の列車も同じくらいの時間は停車することが多い。そのため、旅の合間にちょっと降りて買い物をするにはちょうどよい駅だ。

また、ローカル線っぽさのある山陰本線ではあるものの、このあたりでは本数も比較的多く、概ね1時間から2時間程度の間隔で列車があるので、乗り換えを1本遅らせて食事や散歩を楽しむにもちょうどよい。浜坂は人口1万人程度の小さな町だが、漁港があり(ホタルイカの水揚げは日本一で、浜坂のホタルイカは関西の春の味覚の一つである)、温泉もある。かつて針の生産で栄えた町で、落ち着いた街並みが今も残っている。さらには、同じ新温泉町にある湯村温泉への玄関口でもあり、路線バスが駅前から運行されている。

 

そういうわけで、浜坂駅は通りがかるチャンスがそれなりにある駅で、また、米田茶店浜坂駅を通りがかったら立ち寄りやすいお店だ。

私が立ち寄ったのは今までに3回で、2015年の冬に初めて立ち寄って手作りのお弁当を購入して以来、浜坂を通る時は必ず立ち寄ってきた。

 

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米田茶店のお弁当。優しい味わいだった

2015年の冬、最初に購入したのがこのお弁当だった。「米田の母ちゃんのはりきり弁当」と紹介されていて、夕方だったこともあり残り1個だったので急いで購入した覚えがある。豪華な品ではないが品数が多く、優しい味わいと作りのお弁当だった。前日の夕食が城崎温泉の旅館で出てきた豪華なものだったこともあって、家庭料理風の優しさが良かった。

 

次に浜坂を通りがかったのは翌2016年の秋だった。このときは鳥取駅から城崎温泉駅までの直通列車に乗っていたが、浜坂駅で15分ほど停車する列車だった。昨年のお弁当の印象が残っていたので、改札を出てお弁当を買いに行った。

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浜坂駅の駅弁「かにめし」と、とち餅

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浜坂駅の駅弁「かにめし」。当時はカニをかたどった容器に入っていた

そのとき購入したのが、この駅弁ととち餅、それに鳥取県の県紙・日本海新聞の朝刊だった。とち餅は地元の和菓子屋さんのもので、よく大手メーカーの和菓子が置かれているコンビニとは違い、地元のものが置いてあるのはいいなあと思った。

 

3度目に浜坂を通りがかったのは今年の2月のことだった。このときは浜坂の町で昼食をとる行程を組んでいた。この日はおそらくこの年で一番の雪で、車窓は雪景色、浜坂の町では除雪車が走っていた。降り続く雪の中を歩いて昼食のお店に行き、駅前に戻ってきて、お店の中の暖かさにほっとしたのを覚えている。写真を撮らなかったが、記憶によれば温かい飲み物とお菓子を買ったはずだ。

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分厚い雲の下、雪が積もっていた

 

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除雪車が心強かった

神戸新聞の記事によれば、駅弁は1月6日まで、その他の弁当などは年内いっぱいで終了という。2019年の夏にはお店自体がなくなる。本当に残念だ。浜坂の市街にはコンビニがなく、スーパーはあるが歩いて往復するだけで15分はかかるので、乗り換え待ちや発車待ちで行くにはちょっと厳しい。そして何より、あのお弁当が食べられなくなる。

私は年末から年明けまでの旅行の行程をもう組んでしまっていて、年内や1月6日までにもう一度訪れることは難しい。が、幸い来年2月にまた浜坂を通りがかる予定がある。その時はもうあのお弁当は手に入れられないけれど、ありがとうございました、と伝えてきたいと思う。